教会の幻想的なキャンドルライト。結婚式の演出で欠かせない「キャンドル」の魅力をご紹介
結婚式場としての機能を備えている教会・チャペルでは、クリスマスなどのイベントとして「キャンドルナイト」といったイベントを打っているところが沢山あります。LED(発光ダイオード)全盛の現代に、敢えてアナログな、そしてエネルギー効率としては明らかに劣り、やけどや火事の危険も伴う、そんなロウソクを使うのか。その不思議な魅力と起源についてまとめてみました。
キャンドル(ロウソク)の仕組みと歴史
ロウソクの仕組み
中心にある芯の部分は綿糸やイグサでできており、この周囲に蜜蝋などの油脂を繰り返し絡ませて太く成形してあります。芯の部分が燃焼することで周囲の蜜蝋が溶けて、芯の部分に向かって油脂がしみこんで気化・燃焼することで燃え続けるという仕組みになっています。
ロウソクの歴史
何と、記録としては今から2300年ほども前の、エジプトのツタンカーメン王の王墓からも出土しており、さらにはそれと同時代のイタリアの遺跡からは、ロウソクが描かれた絵も出てきており、既にその時代にはロウソクが当たり前の道具になっていたということがうかがい知れます。 日本では奈良時代に、仏教の伝来と共に伝わったとされており、平安時代頃に松脂(まつやに)を使った自国内での生産が始まったとされています。
無くならない、ロウソク
ガス灯の登場する1800年代まで、室内で使えるほぼ唯一の照明手段として重宝されていたようです。シャンデリアは、元々光源の1つ1つに全てロウソクを使うしかなかったため、長い棒を使って従者が火を点すという作業を行っていたそうです。ロウソク1本では大きな部屋を明るく照らすには不十分だったので、あれだけの数を束ねて初めて、夜の宴会などでお互いの顔を見たりすることができる明るさになるからこその仕掛けが、シャンデリアだったのですね。ただ大きく、宝石をちりばめて豪華に見せるということが目的ではなく、実用を考えた結果ああなったのです。 千年以上もキリスト教の典礼で使われ、しかも修道院などではこの原料となる蜜蝋を得る為にミツバチを飼育するということを組織的に行っていたこともあり、ロウソクというのは典礼の道具として特別な意味を持つため、現代でもキリスト教の各派でロウソクを灯すことが義務づけられています。 その他にもヒンズー教、仏教、神道、宗教や宗派によらない慰霊式でもロウソクは今でも用いられています。
教会でのキャンドルライト
教会でロウソクを点ける機会
奉神礼、聖体礼儀(正教会)、聖体祭儀(カトリック教会のミサ)ではロウソクを灯すことが「義務」とされており、また埋葬式や復活祭の際にもロウソクをもって祈祷・礼拝に参加することになっており、さらには蜜蝋のロウソクが望ましいとされています。
イベントとしてのキャンドルライト
各教会、チャペルにて主に12月の期間限定で「キャンドルナイト」といったイベントが組まれています。内容は様々ですが、ハンドベルとオルガン、ハープの重奏ですとか、ゴスペルと講話を合わせた音楽礼拝の際、その場所のメインの照明を沢山のロウソクのみにするという取り組みです。 また、「光を得るのに手間暇掛かる」という制約を逆手に取って、スローライフ運動の象徴として大勢で集まってのキャンドルナイトがイベントとして組まれていたりします。(但し、そこで使うロウソクが石油由来の原料のものですと、温室効果ガスはスピードが落ちてはいるものの確実に待機中に増えることになるので、蜜蝋などの天然由来のものであることに気を遣う必要があります。)
何故、不思議と落ち着きを覚えるのか
天然の蜜蝋は、蜂の巣から取るためロウソクを燃焼させると独特の甘い香りが漂います。教会とは基本的には良識を持った人々が集まるとても安全な場所であり、そこに立ちこめる甘い香りは教会の雰囲気と相まって「蜜蝋の香り=安全=リラックス」と条件付けによる学習が脳に刷り込まれます。 また、自然の中にしばしば出現する、ピンクノイズと言われる独特の規則を持った「揺らぎ」にロウソクの炎の揺れ方が合致するということも分かっています。他のピンクノイズの形としては、小川のせせらぎの音、木漏れ日、心拍の間隔、蛍の光、現代の人工物で言うと電車の揺れ(だからウトウト寝てしまうのですね)などがあります。照明がロウソクしかないと、否応なく光の揺らぎがそのピンクノイズの周波数になるので、脳がリラックスする方向に誘導を受けます。(脳波の引き込み現象) 昔の人々は知ってか知らずか、ロウソクのこの効果を体感として知っていたために、2000年以上の間ロウソクは親しまれてきたのです。
結婚式のキャンドル
教会と切っても切り離せないキャンドルライト。その歴史は千年以上です。LED全盛の現代にあっていまだにロウソクが愛されるのは、ただの凝り固まった懐古主義ではなくて、科学が後追いで解明したリラックス効果などもあって、必然と言えます。特別なイベントを組まないとあまりふれあう機会のないロウソクですが、是非身近に教会がありキャンドルナイトのイベントを催行しているところがあれば、参加してみて下さいね。